着物の上に一枚はおれば、驚くほどテキパキ動ける。家で過ごす時間が増えた今、とくに気になる存在、割烹着と上っ張り。いわゆる白の昭和風割烹着も憧れるけど今は素材も機能もシルエットもめきめき進化中。ふんわり優しい風合いの割烹着からちょっとそこまでのコートとしても、なんと撥水素材までも登場!
薄手? 地厚? 機能性重視?
3人の着物好きが実際に試してみました。
試す人
二ノ宮裕子(右)
美術家、女子美術大学非常勤講師。観劇や友人の個展にと着物生活を自由に楽しむ。海外のヴィンテージ生地で帯を自作することも。
吉澤 朋(中央)
ライター、翻訳家。紬織りで初の人間国宝・宗廣力三の孫。この日は染めから、整経、糸通し、織機にかけるまで、半年かけて織りあげた紬で登場。
籏智優子(左)
ライター。「着物はほぼもらいもの」のちゃっかり派。「着物&割烹着」姿に憧れ、かつて某文壇バーで週1回アルバイトをした過去も持つ。
ベーシック派? 進化系派?
気になる割烹着は…
エントリー1 シンプル割烹着
割烹着の定番スタイルを体現した機能的なロングセラー。
エントリー2 「ROCCA」久留米織割烹着
軽くやわらかな風合いが心地いい。ちょうちん袖にもキュン。
エントリー3 「木ノ花」上っ張り
さっとまとえる道中着風の形状。ワンマイルコートとして着ても。
エントリー4 「たかはしきもの工房」着々/キキ トップス、ギャルソンエプロン
さっとまとえる道中着風の形状。ワンマイルコートとして着ても。
エントリー5 「たかはしきもの工房」ロング活動着セリエ
厚手の生地で汚れも寒さもシャットアウト! シルエットもスラリ。
エントリー6 「おとづき商店」撥水加工の上っ張り
水回りの作業はおまかせ! ありそうでなかった撥水生地の上っ張り。
着てみた
令和時代の今は、色や形、丈、素材もさまざまで、かつ機能性も兼ね備えたワンランク上の割烹着が急増中!そこで今回、評判の6枚をピックアップ。着物好きの3人が見た目や着心地をチェックすることに。
「ROCCA」の久留米織割烹着。全体に細かなうねが浮いた生地は綿100%。ワッフル地のようにふんわりと軽い。
二ノ宮さんは「衿の開きは大きく取られ、袖の幅もたっぷり。体の動きが妨げられず着心地がいいです。
ベージュ地に小さな紺のドットという無地感覚の柄行きは、私が今日着ている茶色の格子柄だけでなく、どんな色柄の着物とも相性がよさそう」とにっこり。
正統派の佇まいを目にした3人の第一声は「ちょっと地味?」。 ところが吉澤さんが、レモンイエローの紬の上に紺の一枚を試着すると、おお、素敵ではないですか! 「余計な飾りがなく、形がシンプルなので、紺のシックさが際立ちますね。紺なら汚れも目立ちにくいし」と二ノ宮さん。 素材は綿とポリエステルを混紡した、さらっとした丈夫な平織り。軽い上、水がはねても染み込みにくく、洗ってもすぐ乾く。 しかもアイロン掛けも不要。ロングセラー商品なのも納得がいく。
トップスはショート丈。「ジャケット感覚で素早くはおれるし、布の面積が少ない分、洗濯するのも干すのも楽そう」と籏智さん。袖は手首に向けて細くなるつくりで袖口にゴムを入れてもOK。ゴムが入っていないと腕まくりはしにくいが、シルエットは格段に美しい。さらに二ノ宮さんが発見したのはウエスト脇のタック。「このタックのおかげで、背中側はゆとりがあるのに腰まわりはきゅっとシェイプ。お太鼓を圧迫せず、かつシルエットもきれいになるよう考えられているんですね」と感心しきり。
立てひざもしやすいロング丈で、やはりお太鼓を圧迫しないよう背中側はゆったりめ。上前と下前は、内側のループに通した紐で締めるつくりで、体にフィット。ゆったり・ぴったりの塩梅が絶妙で、シルエットのきれいさと、体の動かしやすさが同居した一枚だ。厚手の生地を使用し、一定の防寒性を兼ね備えているのもポイント。
ありそうでなかった撥水加工の上っ張り。和装コート専門店「おとづき商店」のノウハウが注がれた一枚だ。特筆すべきはやはり水をはじく力。炊事やお風呂掃除はもちろん、茶道の水屋仕事にも重宝する。小雨程度なら雨コートの役割も果たしてくれそう。合繊ゆえ、小さくたたんでバッグに入れてもシワになりにくいのもうれしい点。
結果発表!
シンプル割烹着
レースなし・フリルなし・衿は角形・背中側に2カ所の紐、という「割烹着の定番」を体現するロングセラー。袂を収めやすいよう袖幅はたっぷり。袖口にはゴムが通り、腕まくりしやすい。素材は適度な撥水性と乾きの早さを併せ持つ綿とポリエステルの混紡。見た目がシンプルで着丈たっぷり、かつ持ち歩いてもシワがつきにくいため、水屋着にも。
動きやすさ ★★★
ガード力 ★★
軽さ ★★★
シワのつきにくさ ★★
おしゃれ度 ★
「ROCCA」久留米織割烹着
先染めした木綿糸を使い、ふわりと軽く織りあげたシワになりにくい久留米織の割烹着。表面に細かなうねがあるため、通気性に富み、着心地はさらり。やや広めに開いた角形の衿から緩やかにつながる袖のシルエットは、パフスリーブを思わせるかわいらしさ。ベージュのみ紺色の細かなドット柄で、他の2色は無地。
動きやすさ ★★★
ガード力 ★★
軽さ ★★
シワのつきにくさ ★★★
おしゃれ度 ★★★
「木ノ花」上っ張り
脱ぎ着が楽な前開きタイプの上っ張り。ワンサイズの展開ながら、2カ所で結ぶ紐で身幅を変えられ、自然に裾すぼまりのシルエットに。素材は綿で、一定の防寒性も備えているため、家事のほか、近所へのお使い程度なら、コート代わりにさっとはおってもよし。
動きやすさ ★★★
ガード力 ★★
軽さ ★★★
シワのつきにくさ ★★
おしゃれ度 ★★★
「たかはしきもの工房」着々/キキ トップス、ギャルソンエプロン
両袖を通し、下前の衿先に付いたボタンをボタンホールにくぐらせたら、上前を重ね合わせ、紐を1本結ぶだけで簡単に着られる。三つあるボタンホールで身幅の調整OK。ウエスト脇のタックと、前上がりの裾線効果でシルエットすっきり。着物の裾をはしょらず付けられる、共布のエプロンは前下がりでスラリ効果も。
動きやすさ ★★★
ガード力 ★★
軽さ ★★
シワのつきにくさ ★★★
おしゃれ度 ★★★
「たかはしきもの工房」ロング活動着 セリエ
まるでコートのようにおしゃれな道中着タイプの活動着。紐を背中側にぐるりとまわすことで、スラリと美しいシルエットが実現する。内側にループがあり、紐をまわすのも楽ちんなつくり。見た目の美しさはもちろん厚手の生地で、ひざ下までをすっぽり包み、水やホコリ、ひざをついたときの擦れから着物をガード。
動きやすさ ★★
ガード力 ★★
軽さ ★★
シワのつきにくさ ★★★
おしゃれ度 ★★
「おとづき商店」撥水加工の上っ張り
和装コートメーカー・おとづき商店が、雨コートづくりのノウハウを盛り込んだ上っ張り。撥水加工された生地は、水や汚れから強力にガード。合繊ながら適度な落ち感もあり、体のラインにきれいに添う。小さくたたみバッグに忍ばせてもシワになりにくいため、水屋着としてもよし、雨コート代わりに使ってもよし。
動きやすさ ★★
ガード力 ★★★
軽さ ★★★
シワのつきにくさ ★★★
おしゃれ度 ★★
一口に割烹着と言っても特徴はさまざま。その奥深さを身をもって知った3人は、「割烹着に求める要素」をまず明確にし、それにマッチする一枚を選ぶ大切さを実感。読者のみなさんもマイ割烹着をお選びあれ!!
●引用元
買いもの七緒 着物まわり 買いもの帖 2021年度版(プレジデント社)
●スタッフクレジット
文=富士ミネ
撮影=神ノ川智早、中林正二郎(snow)