着物は体に優しいもの。それを支える肌着です
●三砂ちづるさん 疫学者
着物を着続けて二十余年。三砂ちづるさんは、教壇に立つときも日々の暮らしでも着物に親しんできた。「毎日のように着るものですから、シンプルに心地よく過ごせるのが一番です」
着物を着ようと決めたとき、着物メンター」ともいえる友人があらゆるアドバイスをくれたという。できるだけ手間をかけずストレスなく、毎日着ても苦にならない。そんな着物との暮らしを続けるために薦められたのが、美容衿と半じゅばんの組み合わせだ。「最初にこの『技』を教えてもらって本当に良かった。20年以上お世話になっています」。半じゅばんのお供には裾よけを使う。通常は絹を、真冬はネルで防寒。「ネルは、友人がわざわざ手づくりして贈ってくれたこともあります。ありがたいですね」
着物は体に優しいもの。三砂さんの着姿はそれを体現するように自然体だ。「本来の着心地を引き出したいから、肌着も着物用を選びます。洋服用ではどうも心地がよくなくて」
着物を愛し、呼吸をするようにまとう三砂さんは、この春、沖縄に拠点を移した。「沖縄にはウシンチーという着方があります。帯を使わず紐だけでゆったり着る。素敵な着姿なのです」新たなステージでの着物ライフが、楽しみで仕方がない。
できるだけらくに心地よく着物を着ることを心がけている
三砂さん。ふだんの着物は腰紐1本だけで着つけていると
いう。外出時はいつも、腰紐1本とクリップ一つをバッグ
に入れておく。「これさえあれば、大抵のことは解決します」
美容衿はじゅばんの衿にかけ、軽く縫いつけておく。
「待ち針も打たず、ざっと縫いつけるだけです。
そのまま洗濯機で洗えるので大変に便利」。まず
背中心を縫い留めてから左右に10~15cm、
衣紋(えもん)抜きの幅程度を縫う。
三砂ちづるさんの愛用品
美容衿
衿元が決まるから
初心者にもお薦めです
半じゅばん
衿を付けたまま
洗濯機で洗っています
裾よけ
絹とネルの2種類あれば
夏も冬も快適です
みさご・ちづる 作家、疫学者。国内外の大学で学び、JICA疫学専門家として国際協力活動にたずさわる。2004~2024年春まで津田塾大学学芸学部教授。20年ほど前から着物を着はじめて今に至る。近著に『六〇代は、きものに誘われて』(亜紀書房)。
撮影=吉澤健太 文=沼田実季