あの人の愛用品

あの人の愛用品/石川智恵さん

ほんの少しの冒険で、
いつもの着物や帯の新しい顔を発見できます

●石川智恵さん ヘアメイクアップアーティスト

ヘアメイクアップアーティストとして活躍する石川智恵さんが着物の魅力に目覚めたのは6年ほど前。人に誘われて行った着物レッスンで着物の楽しさを知り、以来、プライベートでも着物を楽しみ、また事でも、着物カタログのヘアメイクや着つけを手がけるようになった。「ブルー系が好きで、着物も青や黒など落ち着いた色のものが多いので、自然と小物も同じトーンのものを選んでいました」という石川さんだが、髪の色を変えてから好みも少々変わってきたのだとか。「金髪にしてからキャラクターが変わったというか、より幅広く遊べるようになった気がします」。着物のコーディネートにも新しい風を入れたい、とはいえ着物や帯を新たに買うのはなかなか勇気が要るもの。けれど「小物なら場所も取らないし、思い切った色も選べる。それにほんの少し色を入れるだけで全体の印象ががらりと変わるのが面白くて」。
 石川さんが「私にとっては大冒険のチョイス」として合わせたのは黄色系の帯締めと帯揚げ。「寒色系や濃い色が多い手持ちのラインナップではおとなしくシックなトーンにまとまりがちでしたが、この色を入れることでぱっと軽くなりました」。髪の色ともよくマッチして、全体が明るくアクティブな印象になった。「ついつい好きな色に偏りがちですが、小物を替えるだけでコーディネートが新鮮になるなんて、新しい発見です」。小物使いの自由を知ったら着物がもっと楽しくなる。石川さんの装いに新たな扉が開いた。

「新しい小物がやって来ると、手持ちの帯や着物に当てて想像を膨らませます」。シンプルなコーディネートを、小物がぐっと引き締めてくれる。

細かい絣(かすり)が入った黒の紬にミンサー織の帯。帯に入った黄色系を拾って山吹色の帯締めに菜種色の帯揚げを合わせたら、全体が明るいイメージに。

石川さんの着物ワードローブにはモノトーンや紺色、ブルー系が多い。「思い切って小物で色を差してみたら新しい世界が広がりました」

これまでは着物と同じく、帯締めにも落ち着いた色を選んでいたという石川さん。ワードローブに新しい風を吹き込んだ山吹色の帯締めは「意外とどの着物や帯にも合うんです」。

石川智恵さんの愛用品

着物スタイリスト・コバヤシクミさんの監修による帯揚げと帯締め。合わせやすく、それでいて全体をきりりと締めてくれる色使いはさすが。上質な縮緬の帯揚げは山葡萄(やまぶどう)、木賊(とくさ)色、露草、菜種色。細幅できり房と、老舗のこだわりが詰まった帯締めは胡桃(くるみ)、水浅葱(みずあさぎ)、山吹、桔梗(ききょう)のそれぞれ4色。

いしかわ・ちえ サロンや化粧品会社勤務を経て独立、ヘアメイクアップアーティストとして雑誌や広告で活躍。自身がカタログのヘアメイクを手がける「THEARD」の着物レッスンがきっかけで着物好きに。撮影の着つけをすることもあり、最近は子供の着つけを練習中。

撮影=山田 薫 文=沼田実季

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