合わせやすいものが
無難なものとは限りません
●シーラ・クリフさん 十文字学園女子大学名誉教授
鮮やかなコーディネートで着物の新たな扉を開くシーラ・クリフさん。この日は、ブルーを基調に赤やグリーンのアクセントカラーを差し、波紋を思わせるモチーフをちりばめた涼しげなコーディネートを見せてくれた。そして何といっても、注目は草履だ。爽やかなブルーの台にピンクの鼻緒、サイドには水玉のような丸を重ねた柄が。「実は、私がデザインしたものなんです。かわいいでしょう?」。履きやく丈夫で、長時間歩いても足が疲れない「IWASA」の草履は、シーラさんの長年の愛用品。「それを自分でデザインできるなんて」。
着物と帯はもちろん、足袋や草履、メイクやアクセサリーまでトータルで考えるシーラさん。草履は、ともすれば 〝無難〞な色を選びがちだが「せっかくおしゃれしても、足元が地味でおとなしいともったいない。たくさん色が入っている方がいろんなものと合わせやすいし、コーディネートが決まります」。
日本の器や布にも造詣が深いシーラさんは、デザインを考える際に民藝や古布なども参考にした。「黄色の草履は、紬などふだんの着物用にと考えたもの。芹沢銈介がよく使っていた民藝の色合いを参考にしました」着物の「色遊び」がますます楽しくなりそうな1足だ。
着物にブーツやパンプスを合わせることもあるシーラさん。「大正時代のアンティーク着物を着るときにはモダンガールのようなレトロ感のある靴を、ディスコに行くならシルバーのブーツで」。その日のテーマに合わせて、履き物も自由に。
同じ着物でも、草履を替えるだけでまったく違う雰囲気に。水色の台に濃いピンクの鼻緒の草履を合わせたらフェミニンで優しい印象。民藝の色使いにヒントを得たという黄色、紺、えんじの組み合わせだと、アクティブで元気なイメージになる。
シーラ・クリフさんの愛用品
1928年創業の「岩佐」の草履は、ダブルクッションの採用で足裏の当たりが柔らかく、足が沈み込まない履き心地が絶妙。ラバー底で滑りにくいので履き慣れない方にも安心だ。今回、シーラさんとのコラボ商品として新たに登場した4色から、『七緒』では木綿や紬に合いそうなポップなカラーリングのものと、やわらかものにぴったりなやさしい色合わせの2色をチョイス。足元のおしゃれアイテムとして活躍しそうだ。
しーら・くりふ 着物研究家、着つけ師、着つけ講師、十文字学園女子大学名誉教授。イギリス・ブリストル出身、1985年来日。骨董(こっとう)市で見た色鮮やかな着物に心を奪われて着物生活に。2024年1月に『KIMONO EVOLUTION』(芸術新聞社)を上梓(じょうし)。
撮影=吉澤健太 文=沼田実季